不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

口に出せない習慣、奇妙な行為/ドナルド・バーセルミ

 サンリオSF文庫で読んだが、わずか210ページの間に15編もの作品が収められている。しかし超強敵である。噂に聞くフラグメント手法が凶悪極まりなく、文章が半端でなくごたごたしている。というかこれは最早、言語によるコラージュという他ない。ストーリーは「多分こういう話なのだろう」と推察するのがやっと、作品によってはそれさえ不可能。ましてや、その作品を通じて作者が表現したかったことを正確に把握するのは、困難を極める。
 だがしかし、ふとした拍子に、凄まじい切れ味のフレーズが出て来ることがある。また、文章のテンションが異様に高いので、その勢いに呑まれることも頻繁に発生。また人間のコミュニケーションに対し、強烈なまでに皮肉な視線を注いでいることも、慣れてくるとわかってくる。美しい感傷も、薄汚い情念も同列に扱われ、言語がとにかく旋回する(眩暈が!)中、ほぼ常に尻切れトンボで終結する物語、そして「凄まじいものを読んでしまった」という疲労感。
 なるほど確かにこれは無敵だと思わせられた。歯応えある小説を読みたい人には強くお薦めしたい作家だ。エンタメでは間違ってもないと思うが。