不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

世界の中心で愛を叫んだけもの/ハーラン・エリスン

 かの有名な短編集。粗野な振る舞いをする登場人物がひしめき、血と暴力がメインテーマに据えられる作品が大半を占める。品格・格調など薬にしたくもないが、不思議に洗練された作風も魅力的だ。表題作を含むいくつの作品では、イメージの奔流に確かに凄いものがあると思わされる。
 もちろん、世評どおり、これを絶賛する人間が実は希少種というのもわかる。共感を得るには作者の視線は傲岸不遜だし、この表現だけは死んでも使いたくなかったのだが死んだ気になって使わせてもらえば、《古い》。派手な格好で若作りした、言葉遣いの荒い不良中年に、酒の席(もちろんそういった感じの店)で説教を食らっているような不愉快な感覚が付いて回る。しかし、このような説教を生み出す価値観が、輝きを放ち《イカした》時代もあったのだ。そこから得る物だって、もちろんあるだろう。しかし私が共感することは、一生ないだろう。そして恐らく、《彼ら》より上の世代に理解されることもないのだと思う。これこそジェネレーション・ギャップという奴ではないだろうか。
 収録作品の中では、やはり「少年と犬」が面白かった。続いては表題作、「眠れ、安らかに」「聞いてますか?」辺りですかね。中でも「聞いてますか?」は、素直なアイデア・ストーリーとして多くの人に受け容れられるだろう。