不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

怪盗グリフィン、絶体絶命/法月綸太郎

怪盗グリフィン、絶体絶命 (ミステリーランド)

怪盗グリフィン、絶体絶命 (ミステリーランド)

 「あるべきものを、あるべき場所に」がモットーの怪盗グリフィンは、ある日、メトロポリタン美術館ゴッホを盗むよう依頼される。何と、メトロポリタン美術館に陳列されているゴッホは贋作であり、真作は別にあるというのだが……。
 という幕開けから、物語は弾むように進む。展開も起伏に富んでいるし、ネタも本当にてんこ盛り、かつそれぞれ趣向が凝らされている。しかも。年少の読者を意識したのか、特に何も考えずに読んでいるだけでも楽しめる。作者が作者だけに、これは驚きだった。しかし嬉しい誤算である。
 既読の《ミステリーランド*1の中では、『黄金蝶ひとり』と並び、年少者に遠慮なくお薦めできると共に、大きなお友達にとっても読み応え満点というなかなかの傑作となっている。法月に付き物の、本格・名探偵に関する七面倒臭い問題意識*2は、ここでは放棄されている。さあ、読書をただ楽しもう!

*1:11/19である。

*2:私自身はこういうの大好きですけどね。