不壊の槍は折られましたが、何か?

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戦争を演じた神々たち/大原まり子

戦争を演じた神々たち(全) (ハヤカワ文庫JA)

戦争を演じた神々たち(全) (ハヤカワ文庫JA)

 クデラ軍が星々を蹂躙し、キネコキス軍列がクデラに果てしない戦いを挑む。そんな遠未来の人類文明圏を描く連作短編集。扱われているのは(作者自身が言うように)神と女と戦争だ。ハードSFでは全くなく、幻想小説的な要素を駆使して、どこまでも華麗な寓話としての神話を紡いでゆく。何せ存在と時間の現身が登場したりするのである。文章はシンプルだが、それはわかりやすさを志向したものではなく、研ぎに研ぎ澄まし、鋭敏にして鮮烈な表現をおこなうがために存在する。ゆえに、さくさく読める割には、非常な満足感・満腹感を覚えることができるはずだ。
 というわけで傑作。この作家を読むのは初めてだったが、他の作品も適宜読み進めたいと思った。