ハイブリッド・チャイルド/大原まり子
- 作者: 大原まり子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1993/09/01
- メディア: 文庫
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色々あって、サンプルBⅢ号はこの死んだ娘の人格を受け継ぐことになる。そして以後、基本的に少女の形態をとることになるサンプルBⅢ号の逃避行、そして逃げる先での悲劇的な交流を美しく描くSF。文庫にしてほぼ500ページかけて描き出されるのは、結局のところ《愛》である。本来は機械であり道具である彼女が、少女の精神を受け継ぐことで醸し出される《人間的*1》な性格付けは、《愛》というテーマをより明確に打ち出す。主人公である《彼女》以外の登場人物(機械含む)も、最終的には愛に生き、愛に死んでゆく。そして物語の結末も、田中芳樹ならば噛み付きそう*2なテーマにまとまる。
以上の全てが、とても華麗に綴られる。大原まり子が表現に意匠を凝らしているのは間違いなく、またテーマ的にも彼女は『ハイブリッド・チャイルド』で全力投球とでも呼ぶべきものを見せていると考える。彼女自身、この作品が代表作であることを認めている。私はまだ4冊目なので肯定も否定もできないのだが、傑作であることは間違いない。巷間「華麗」と言われるタイプの小説が苦手でない人は必読だろう。
*1:多分にニンフェット的だが。
*2:同種のオチをアイザック・アシモフが用意したら、解説で噛み付きやがった。信じがたい。