白い花の舞い散る時間/友桐夏
- 作者: 友桐夏,水上カオリ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/09/01
- メディア: 文庫
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最初のうちはリリカル・ミステリーという煽りに相応しく、少女たちの交歓が比較的濃やかに描かれる。しかし話が進むにつれ、徐々に暗雲が立ち込め、遂に物語は予想だにしない方向に転換する。この方向転換は少々ご無体であり、転換後も話は展開してゆく。しかし、少女視点だからか、たとえば大人向け小説であれば三人称で提示されるであろう《背景》が、どうにも遠景に押しやられ、か細く響くのみであり、作者の用意した世界に浸れない憾みがある。
詳述すると、たとえば、同じく中盤以降妙な展開を見せる作品(アンブローズ『迷宮の殺人者』とか)は、変は変なりにしっかり情報量を織り込むことで、「まあこういう世界なんだろう」という説得力を何とか保持した。また、最後の最後でいきなり「別人が書いたのではないか?」という違う話になる場合、読者を驚愕させた後即座にサッと話を切り上げて、読者の冷静を取り戻す時間を与えないことが多い。
しかし『白い花の舞い散る時間』は、変な話になった後、話は続くうえに、少女視点の少女たちによる少女たちのための物語、という性格を維持してしまう。その結果、作品世界における《背景》の位置づけがどうにも曖昧なままであり(結局少女はガキであり、ガキは自分と自分たちは語れようが、世界/社会の語り部には向かないのでは?)、それが説得力の弱さとなって表れているのではないか。少なくとも私はそう思う。
……我ながら胡散臭い理屈ですが、いずれにせよ地雷です。気をつけましょう。