倒錯の罠/ヴィルジニ・ブラック
- 作者: ヴィルジニブラック,Virginie Brac,中川潤一郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09/05
- メディア: 文庫
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400ページ強ある作品のうち、ヴェラの家族(兄弟姉妹や母親)とのやり取りが半分を占めるのも奇怪である。しかも割と情念系の家族で、別に憎しみ合っているわけでもなさそうなのだが、妙にドロドロしていて、寄ると触ると口論ばかりしている。以上は設定やキャラの話だが、展開もなかなかに変。最後のクライマックスとか、情景を思い浮かべるとなかなか笑える(トリック云々ではありません)。
というわけで、バランスがどこかおかしい物語であるが、リーダビリティというか、妙に強い吸引力があることは特筆しておきたい。やっぱり情念系のヴェラの語り口が、全ての決め手になっているのだ。晴れがましくなる瞬間は全くないが、陰々滅々というわけでもない独特の風情、いささか病んだ熱気を作品にもたらしている。本当に独自路線。おフランスには、変な作家が多いなあ……。お薦めです。