不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

LOVE/古川日出男

LOVE

LOVE

 舞台は品川・目黒。物語の中心には野良猫たちがいるが、梃子の支点のような感じで、彼らは物語のテーマには踊り出さない。作用点・力点は、舞台を通り過ぎてゆく雑多な人々である。彼らは互いに微妙に影響したりまるで関係なかったりで、物語は群像劇的な様相を呈す。結局、各々の物語は密接な関連を持たないまま終わるのだが、ページが進むに連れ、登場人物の言動の奇怪度・幻想度が増してくる。相変わらず文章も妙に狂熱的で素晴らしい。
 個人的にはもう少しテーマがはっきりした方が好みだが、古川ファンにはお薦めである。