妙なる技の乙女たち/小川一水
- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
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唯一の例外は、最後の「the Lifestyles Of Human-beings At Space」である。この主人公・美旗は、ある大規模プロジェクトの責任者を務めており、物語自体一貫してそのプロジェクトの顛末を描く。しかしそのプロジェクトというのが「宇宙における食生活の改善」というもので、施策こそかなり大掛かりとはいえ、テーマとして「日常生活」を見据えていることは間違いない。
この短編集を通して小川一水が描く「働く女性たち」は、いずれも本当に活き活きとしている。SF的なテーマの強調も、女権伸長論の強調も注意深く回避された結果、誰でも(恐らく非SFファンでも)十分に楽しめる一服の清涼剤、爽やかな普通小説としても読めるSF小説がここに顕現した。『妙なる技の乙女たち』は、高邁な理想や、センス・オブ・ワンダーの極大化を掲げる小説ではない。読みやすく親しみやすい、チャーミングな短編集なのである。