不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

NHK交響楽団

  1. オラス:沈黙の王国
  2. モーツァルトクラリネット協奏曲イ長調K.622
  3. プロコフィエフ交響曲第5番変ロ長調Op.100

 《沈黙の王国》はよくわからない曲であった。最初とそれが回帰してくる最後の静謐な瞬間は良かったが、その間の展開が……。勉強不足あいすまぬ。
 モーツァルトは、最初の一音からはっとした。NHK交響楽団を初めて、心の底から何の他意なく純粋に《いいオケだなあ》と思えた瞬間かもしれない。モダン楽器による素晴らしいモーツァルト。ソロの横川もうまい。特に第一楽章は良かった。正直うっとり。
 プロコフィエフは非常に丁寧な演奏。勢いに任せることは絶対にせず、リズムを弾ませることもなく、ただただひたすらにスコアを着実かつ明晰に音化してゆく(結果としてテンポも遅い)。息苦しいし真面目過ぎだし、もっと軽重織り交ぜてくれたら良いのになあ、と思わないではなかった。それに、弾いている方はたまらんかも知れない。スコア丸見えという感じ。しかしとてもいい演奏だった。この曲を確かに聴いたという充実した聴後感。シーズン最後の定期演奏会としてはいいんじゃないでしょうか。
 なお今日最大の収穫は、NHKホールで遂に、それなりに音の届くエリアを発見した点である。今後は使わせていただきましょうか。