不壊の槍は折られましたが、何か?

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シカゴ交響楽団来日公演(横浜)

横浜みなとみらいホール:18時〜

  1. モーツァルト交響曲第41番ハ長調K551《ジュピター》
  2. R.シュトラウス交響詩英雄の生涯》op.40

 ハイティンクでこのプログラムを聴くのは2回目である。前回はシュターツカペレ・ドレスデンとの名古屋公演だった。
 それとの比較で言えば、解釈自体はほぼ同様で、変なことは一切ない正統派であったが、オーケストラの性格の違いが如実に出ていた。シカゴ交響楽団の出す音は無色透明かつ無味、ただし実にノーブル。ドレスデンは音色自体に色香があって馥郁たるニュアンスに満ちていたが、シカゴ交響楽団はこういう音だから、ハイティンクの楽曲把握を、その高い基礎能力を活かして、かっちりきっちり忠実に音にしていく。ホルンをはじめ、若干瑕があったことは確かだが、弦の見事に揃ったアンサンブル、悉くいい音を聴かせた木管群、マッシブだが絶対に美感を失わない金管群から、好みはともかく、シカゴ響が世界最高の楽団の一つと言われていることに深く納得した。
 この結果、特別なことは何も起こさない、頑ななまでに律儀な演奏となった。ニュアンスで勝負しないため、《英雄の生涯》では分厚いサウンドにやや飽きが来たことは確かだが、高水準の演奏であったことは間違いない。モーツァルトで聴かせた純白の歌が本日のハイライトだったかな。このコンビ、標題音楽よりも絶対音楽の方が面白いかも。