不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

となり町戦争/三崎亜記

となり町戦争

となり町戦争

 《僕》が《となり町との戦争》をどのように感じ取るか、或いは感じ取ることができるのかを主眼とする小説である。ただしセカイ系とまでは言えず、風刺性や問いかけ成分の含有量がやや多め。完成度・純正度は非常に高く、またしっとり・淡々と進むため、読みやすい。私は大いに楽しみました。
 ただし、小説本体より、ネット上の感想を読む方が興味深かった。この完成度の前に《作者は戦争を描けている/描けていない》=《作者の考える戦争は納得できる/納得できない》という議論はあまり意味がないように思うが*1、実際は、そういった感想が大半である。作者自身もこれを助長するようなコメントを……。微妙な感慨を持ったことを告白しておきたい。

*1:もちろん、完成度が低いとか、作者がやりたいことやれてねーじゃん、という意味での《作者は戦争を描けている/描けていない》議論は別な。これには意味がある。