不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

銀輪の覇者/斎藤純

銀輪の覇者 (ハヤカワ・ミステリワールド)

銀輪の覇者 (ハヤカワ・ミステリワールド)

 発刊当初に購入したにも拘らず、読むのが随分遅れてしまった。小説をこんなに積んだのは久しぶりである。
 中心に据えられるのはスポーツの魅力そのものである。素人ながら賞金に釣られ、自転車ロードレースに出場した男たち。彼らがとある玄人とチームを組んで、自転車レースそのものに魅せられてゆく過程が素晴らしい。他の登場人物も、自転車が好きだということが伝わってくる。そして彼らの間で展開されるドラマがなかなか楽しめる。昭和十年代という時代設定もしっくり来ている。
 というわけで、なかなかの快作であった。惜しむらくは、『鋼鉄の騎士』を全ての面でスケールダウンしたような感じが拭えないこと。特に陰謀面がショボイような気がした。