不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

追憶のかけら/貫井徳郎

追憶のかけら

追憶のかけら

 登場人物に対するルサンチマン。何と浅ましいことであろうか。だが私の感想はまず第一に、嫉妬である。怨念である。お前はほとんど全てに満ち満ちているではないかという苛立ちなのである。色々噴出しそうな上に、読めるような文章に加工する余裕もない。これ以上具体的な感想は控えることとしたい。いずれにせよ読ませる作品ではあり、代表作の一つとして貫井徳郎の名と共に、長く名をとどめるだろう。

 ただ、ミステリ的な観点から、少しだけ。
 風の便りに聞いたのだが、貫井徳郎ないし出版社はこの作品を「日常の謎ロバート・ゴダード」と認識しているらしい。非常に気になる。『追憶のかけら』は、日常の謎でもロバート・ゴダードでもない。主人公の日常が揺らぐのであれば、それはもはや日常の謎ではあり得ない。主人公のスキルが低くない時点で、それはもうロバート・ゴダードではない。しかも時間も、まだまだ最近に過ぎる。巻き起こる情動は、追憶と呼ぶには余りにも新鮮過ぎる。
 出版社が誤解しているだけなら問題はないのだが。真実は何処?