不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ヒューマン/ロバート・J・ソウヤー

 『ホミニッド』に続く、ネアンデルタール三部作の第二弾。やはりシリーズものであったか……。
 内容は、『ホミニッド』のぬるい内容から一歩踏み込み、バカSFネタ、ストーリーテリングいずれも復調。もっとも、『ホミニッド』と『ヒューマン』の温度差は恐らくわざとであり、作者がいよいよ物語に加速度を付けて走らせ始めた、ということだ。収穫は、現在の人間社会への批判が冴えていることだろう。主人公二人の恋愛模様と絡め、異文化の交流と受容を(この二人の間でだけだが)じっくり描出しているのもポイント高し。これまでは正直、ハッピーエンドにしかできない人間全肯定型の人と思っていたので、視線が割と冷静で意外だった。ただし、ネアンデルタール側の主人公が既に感化されかけているのは不安要素。
 とはいえ、完結編ではこれらに加え、バカSFネタも遂に炸裂すると思われる。早く読みたい。