クライマーズ・ハイ／横山秀夫

クライマーズ・ハイ

　横山秀夫初の、本格的な長編である。

　横山秀夫は本当にうまい。

　強い感情移入を誘う登場人物たち。没入させつつ感動へ向かう筋運び。そして、それらを十全に表現する、練達の語り口。人の心を掴むことに精通した業師ならではの、待ち望まれた作品である。今更私ごときが指摘することは何もない。作者はこの作品で、その真髄を発揮し尽くしているのだ。こうなると、読者はただただ、それを受け容れるだけで良い。この本は多くの人に賞賛され、かつ売れている。作品の質からして、当然の結果である。

　小説なんて面白くない、と思っている人に薦めたい。これはそんな作品である。