狂い咲く薔薇を君に/竹本健治
- 作者: 竹本健治
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/04/20
- メディア: 新書
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『狂い咲く薔薇を君に』も同様。いやむしろ、類子に岡惚れする津島海人が主役を務めることで、ラヴコメ風味の軽さがとても目立つようになっており、作者の筆致も軽い。ミステリとしての結構には軽量級の処理が施され、人間ドラマの深刻さに筆が割かれることもほぼ皆無、主要登場人物の間には、さながら推理クイズを楽しむかのような雰囲気すら流れている。そしてこの限りにおいて、作者の筆はやはり練達している。50歳を越えていることを考えると余計に、やはり侮りがたい。
竹本健治は《俺は凄いんだ》系の自己主張をあまりしない人なので、少々軽視されている気配がなきにしもあらずだが、実際には、本人がやる気さえ出せば、笠井潔や島田荘司レベルのカリスマ性を帯びることだってできたはずなのだ。支持者の弾も揃っているし。しかし彼の本当に凄いところは、そんな人なのに、気軽にこのような作品を上梓してしまうことであろう。
この作家初体験には向いていないが、ファンなら読んで、楽しんでみよう。そんな感じ。
*1:といいつつ、『妖霧の舌』辺りは大好きですけどね。