スイス時計の謎/有栖川有栖
- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/05/09
- メディア: 新書
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「あるYの悲劇」
題名から容易に連想されるように、例によってダイイングメッセージもの。アイデアがなかなか面白かった。クイズに陥るのはこの手のネタの宿命なんで、特に目くじらを立てることもあるまい。
「女彫刻家の首」
身元が簡単に割れる時代における、首なし死体というテーマの割とうまい消化法。題名からは猟奇的な犯罪が連想される。実際まあその通りなんだけど、有栖川の筆では非常にスマートな印象になるのが不思議。
「シャイロックの密室」
倒叙もの。そんでもって密室。トリック自体は好きでもないし嫌いでもない。
犯人に冷たい視線を投げる火村はうざいですが。
「スイス時計の謎」
フーダニット。これがけっこうよくできてる。
ただ、江神シリーズの作者が、最近はこのレベルで満足の旨表明するようになったかと思うと、時の移り変わりに無常観を覚える。加えて、この物語はとってつけた友情の物語でもある。だから読後の印象は白々しいもの。どうにかなりませんか。そこまで要求する私の方が悪いんだろうけれど。