不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

女王蜂/横溝正史

女王蜂 (角川文庫)

女王蜂 (角川文庫)

 伊豆半島の沖合いにある島の名家・大道寺家の美女、智子が上京して、その色香と共に連続殺人事件を撒き散らす様を描いた作品。

 活劇風のロマン溢れる、なぁんて表現したくなる、やや古風な作品。ヒロインの智子が、なかなかいい味出していると思う。「深層の令嬢」「色っぽい女」という二面性が、作者は間違いなく無自覚だけれど、読者を幻惑する。で、それに起因する正体不明さが出てて、ミステリ的にもいい影響が見られる。襲われる段を除けば、金田一がそんなに目立たないので好感が持てる。こういうのを読むと、名探偵不要論ぶちたくなります。うざいだけに。

 仕掛けとかの処理はさすがにうまい。大家の面目躍如。というわけで、傑作と認定してみました。