獄門島/横溝正史
- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 1971/03/30
- メディア: 文庫
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『八つ墓村』にコメントした時は、「ファンタジーとして割り切る必要なし」と言って誉めたが、幸か不幸か『獄門島』については撤回せざるを得ない。犯人の行動にいまいち納得できず、これを首肯するには「本格本格した世界」を強く妄想せざるを得ないからである。こういう捏造の労は、読者に担わせるべきではない。死んだ老網元をもっと描出してさえいれば、こんな事態は、回避は無理としても、ある程度抑えられたはず。残念。
横溝正史は日本の探偵小説に、西洋のパズラーとしても通用する論理の切れ味を持ち込んだとして評価されている。しかし、実情はそんなことないんじゃないか。確かに、戦前の探偵小説に比べると、有り得なさは格段に緩和されている。しかしながら、『獄門島』の極度に作り物めいた雰囲気は否定しがたく、また、殺人を凄い勢いで看過する金田一耕介は孫と比べてさえ遜色あり。そこらはお約束として流そうよ、と言われそうですが、私は横溝に対していかなる思い出も持たない故、飽くまでも二十ウン歳の時点で抱いた感想のみを抱く。ていうかそうするしかない。恐らく、もっと早くに出会っていれば、『獄門島』は美化されて宝になっていたのだろう。少年が騙されるのか、社会人が過度に白けているのかは微妙なところだが。