不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

拳銃猿/V.ギシュラー

拳銃猿 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

拳銃猿 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 題名が面白い、HM文庫の新刊。内容もなかなか。銃の名手と言ってもライフルではなく拳銃、それも早撃ち得意系なので、ガン・アクションが主体となる。饒舌にして軽快な主人公、チャーリー・スウィフトは魅力的なキャラだ。さくさく人を殺すのだけれど、ここぞって殺しでは、しんみりと引き金を引くのが、印象的である。作者の筆致も、主人公にシンクロしている。つまり、ベースはポップだが、話のキモでは意外に叙情的な側面を見せる。ストーリーの緩急も実にうまい。怪我して病院で目覚めた後、割とダラダラするのも面白く読んだ。

 というわけで、割と広くお薦めできる作品。あえて注文をつければ、「広くお薦めできる」ことそれ自体か。こういう方向性なら、アブノーマルな雰囲気をもっと出しても良かったのでは。