不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

クレシェンド/竹本健治

クレシェンド

クレシェンド

 箱になんか入ってやたら豪華な、大家の新作。

 ゲームソフトの開発に携わる矢木沢は、百鬼夜行の幻影に襲われるようになった。そして、それはどんどんエスカレートし、イメージも鮮明かつ具体的になってゆく……。

 竹本健治の文章は、凄い。人を惹き入れたり圧倒したりするタイプの文章ではないが、言葉のチョイスや並べ方が、余人の及ぶところではないのである。腰を据えて読むと、一読二嘆、三嘆である。得難い感性とはまさにこのこと。そして、そんな文章で描く今回の物語は、日本語に対する思索に裏打ちされた、「言霊ホラー」とでも呼ぶべきもの。竹本健治にしか描けない、実に素晴らしい作品だと思う。