不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

CIA桂離宮作戦/多島斗志之

CIA桂離宮作戦 (徳間文庫)

CIA桂離宮作戦 (徳間文庫)

 聞いた瞬間に腰から崩れ落ちそうになるタイトルだ。ソ連がシベリアの気候改造をおこなおうとしているらしい。ついては、日米の諜報機関が協力し、来日中のソ連高官を桂離宮で拉致して、色々聞き出しちゃえ、という物語。書いてて改めて凄い設定だなと……。
 前半と後半で方向性が違ってくる辺りが興味深い。ネタやプロットの作り込みはさすがに堅牢であり、虚々実々でありながら安心して読める。ただし筆致が非常に淡白なので、キャラとか情感等にもっと拘泥しても良いのではないかと思った。まあギトギトすると、もう多島斗志之じゃなくなるわけだが。
 多島ファンにはお薦め。