不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

夏期限定トロピカルパフェ事件/米澤穂信

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

 小市民シリーズ第二弾。
 前作『春期限定いちごタルト事件』を引き継ぎ、ちょっとヒネた高校生の男女コンビの斜に構えた態度をスパイスに、軽快・軽妙な足取りで日常系のミステリが綴られてゆく。重厚では決してないが、なかなか綺麗にまとまった倒叙や暗号が繰り出され、スイスイ読み進むことができる。読み心地も大変良い。深刻ぶるのもいいけれど、たまにはこういうので息抜きしないと。
 ……だがしかし。
 物語は唐突に、本格ミステリと幸福極まりない結婚を果たすのであった。そして、その結果として終幕に漂う情感も、本当に素晴らしいものとなっている。つまり『夏期限定トロピカルパフェ事件』は疑いもなく傑作であるわけで、かつ、その読みやすさゆえ誰にでもお薦めできる*1作品でもある。米澤穂信は本当に良い仕事をしたと思うし、『秋期限定〜』が今から待ち遠しくてならないのであった。
 解説は『春期限定いちごタルト事件』とは打って変わって、極めて真っ当なもの。やはり解説はこうでなければならない。

*1:もちろん、ラノベ風味に拒絶反応が出る人は除く。