幼き子らよ、我がもとへ/ピーター・トレメイン
- 作者: ピータートレメイン,Peter Tremayne,甲斐萬里江
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/09/28
- メディア: 文庫
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領土紛争の手段として、戦争ではなく国際法廷*1を使うとはなかなかに平和的である。ただし実際にこのような徹底的な法治主義が貫かれていたのか、もうちょっと詳しいところを純粋に知りたいと思う。自分で専門書買えってことでしょうかね。
物語は、背景が『蜘蛛の巣』以上にスケールが大きく、かつ緊迫した状況にあるだけに、落ち着いて事件の謎を調べるというよりも、陰謀渦巻く修道院の秘密をドラマティックかつサスペンスフルに描くという傾向が強い。結果、歴史ミステリというよりも、より広範なエンタメとしての性格が表面に出て来ている。とはいえ、事件の解決をする場は大王の主催する法廷であり、歴史法廷ミステリというなかなか珍しいものを見ることができるのだ。おまけに7世紀のアイルランド法に基づく法廷なのだから、オリジナリティはこれ以上求めようがないのである。また権力に翻弄される個人というテーマがかなり最初の方から追求されているため、ここをキーにすれば現代読者にも理解しやすいだろう。おすすめです。
なおフィデルマは、カースがディベートの相手としては物足りないなどともっともらしい理屈を付けて、エイダルフを懐かしがっている*2。恋ですなあ。