不壊の槍は折られましたが、何か?

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探偵小説四十年(上)/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第28巻 探偵小説四十年(上) (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第28巻 探偵小説四十年(上) (光文社文庫)

 デビューからの四十年を振り返る大著。上巻では昭和12年までが記載されている。
 ネタの大半は既に知っているわけだが、これほど一挙に、しかも時系列順に並べられるとそれなりに貴重なものと思えてくるから不思議だ。にしても休筆が多いなあ……。行き当たりばったりに書くのは私の欠点、と認めているならば、ある程度抑制すれば良かったのにと思わないでもない。総じて、非常にムラっ気のあった、いわゆる芸術家芸術家した人だったのかも知れない、なんてことを思った。
 当時の名だたる作家との交際が綴られているのは興味深い。しかしこの手の交友録というもの、あまり当てにならないのが世の常だ。反証として相手方が乱歩に関して書いたものがあれば生のままで読みたい。乱歩による抜粋という形ではなく。
 散発的に印象的だったのは、まず宇野浩二の乱歩紹介文。読点多過ぎて生理的に本当に気色悪かった。小さな蟻が溶けたミルクアイスにぞわぞわ群がっていると背筋が凍りますよね。あんな感じで読点が踊っています。他には、以下の一文で意識を飛ばした。

 普通なれば、ドイルの翻訳などは中学上級生の所業である。