不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

兇器/江戸川乱歩

 すっきりと仕上がった本格推理。とはいえ新味はなく、トリックも流用である。また、明智が犯人に気付いた契機も、ラストで唐突に「実は小林に調べさせた結果」と来るわけで、ロジカルな部分には無関係とはいえ、後出しジャンケンとなってしまい問題。というわけで、さほど良いとは思えないが、まあ普通に読めるので、それなりに楽しめる。いいんじゃないでしょうか。対角線とかの段は、個人的には無意味だと思いますけれども。こういう無駄なペダントリーは四大奇書(『匣の中の失楽』含む)レベルでやってもらわないと……。

 連作中篇のトップバッターを務めた「悪霊物語」は、人形師の館に招かれた怪奇作家が、怪しさ炸裂の雰囲気に呑まれる様が非常に印象的。乱歩も自由闊達に振舞っている感が強く、つくづく、彼の手になる怪奇小説が少ないのが惜しまれる。