不壊の槍は折られましたが、何か?

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子供たち怒る怒る怒る/佐藤友哉

子供たち怒る怒る怒る

子供たち怒る怒る怒る

 佐藤友哉初体験。リリカルかつ軽妙な筆致で、暴力と愛情(劣情気味)を不条理に描いている印象。ストーリーが畳み掛けてくるのに、文章はなかなか熱気を帯びないのも興味深い。この話の内容で、さくさくと心地よく読めるのは、少なくともこの短編集最大の特徴かもしれない*1。小説の素材がそれほど異ならない舞城王太郎の場合、読み心地良いなんてほとんどあり得ないからなあ。そう考えると、「生まれてきてくれてありがとう!」で主人公が雪に埋もれているのも、何やら象徴的。そう、雪は冷たいのである。
 ただし、所収6編は結局同じことを同じように書いており、連続して読むと正直飽きる。細切れに読んだ方が良かったかな。

*1:微妙な言い回しなのは、佐藤友哉の他の作品を全く読んでいないからである。講談社ノベルスの諸作と比較すれば、意見が変わるかもしれない。