不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

閘門の足跡/ロナルド・A・ノックス

閘門の足跡 (新樹社ミステリー)

閘門の足跡 (新樹社ミステリー)

 お見事な本格ミステリ。事件も地味だし、華麗なロジックやトリックが炸裂するわけではないが、捜査と推理の道行きをたっぷり味わえるのが素晴らしい。必然性や厳格な論理を期待すると裏切られようが、かと言って破天荒なネタというわけではなく、普通に手堅いと思われる。ユーモアおよび、それと表裏一体のペーソスにも溢れており、文章を読んでいるだけでも楽しい。何よりも、ミステリや世の中に対する皮肉や当てこすりが絶妙! ほとんど全部、現代でもそのまま使えるだろう。と言うか、人間なんていつの時代でも変わらないのですなあ。
 黄金期フェチは必読。