不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

忘却の船に流れは光/田中啓文

 この物語、骨組みはSFガジェットの組み合わせである。〈世界〉の正体もまあ大筋ではバレバレなわけで。ただ、ここに戯画化された、数々のグロテスクな情景を、私は絶賛したい。そして、それが若者の青春劇と無理なく融合している点でも。読後ある種の爽やかさえ感じるのは、気のせいだろうか。

 オチに惑わされてはならない。あれが作者の「照れ隠し」な気がするのは、穿ち過ぎでしょうか。少なくとも、あれがやりたくてこの本出したわけじゃないような。