不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

深き森は悪魔のにおい/キリル・ボンフィリオリ

 シリーズ旧作で色々あったらしく、チャーリー・モルデカイは美しい妻ジョアンナと、助手兼料理人のジョックを連れ、ジャージー島に移住していた。ところがこの島で、レイプ事件が発生。友人たちの妻が連続で犯され、犯罪は更に拡大してゆく。友人たちとチャーリーは、自警団のようなものを結成するが成果が全くあがらない。業を煮やした彼らは、レイピストがジャージー島の悪魔の力を借りているのではないかと考え、犯人をおびき寄せるべく、かの悪魔の力を殺ぐミサを催すことを計画する……。
 ひょうきんな一人称で綴られる、エロティック・オカルト・ミステリ。ミステリ的なネタ自体は普通なのだが、チャーリーの一人称が性格的で面白いし、下品かつ下世話なエピソードや会話が大量に詰まっている。話の展開もやたら歪で、なぜ悪魔云々やら黒ミサが必要になるのかさっぱり理解できない(誉めています)。風変わりで、格調など皆無な物語。おバカで皮肉に満ちた雰囲気を満喫できるので、その手の読者には強くお薦めしたい。
 なお訳文にはやや問題ありで、チャーリーの語り口、そしてそれに伴ってチャーリーの性格がいまいち一定しない。これだけが残念。