蝿/ジョルジュ・ランジュラン
- 作者: ジョルジュランジュラン,George Langelaan,稲葉明雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/01/01
- メディア: 単行本
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以下、各編の粗筋を書ける範囲内で。
「蝿」は、映画《ザ・フライ》の原作。とはいえ怪物ホラーでは全くなく、研究者の非業の死にまつわる物語が、悲しみを込めて語られる趣。
「奇跡」は、事故に巻き込まれた男が「しめた!」と歩けない振りをする話。賠償金はもちろんゲットし、遂にはマリア像の奇跡で歩けるようになった男という名声まで手に入れようとする……。優しいラストが嬉しい一品。
「忘却への墜落」は、ある男の、やや狂い気味のモノローグ。ここに記されているのは真実か、妄想か……。そしてラスト、この小説が一体何だったのかを読者は悟るのであった。
「彼方のどこにもいない女」は、原爆の爆心地@広島にいて何やら異次元の存在となり、しかし頑張ればテレビには出て来れる女性に恋をした男の物語。その男の兄が語り手なのだが、最後で兄が有機的に話に絡んで来るのが面白い。なるほどそう来たか。
「御しがたい虎」は、誰にでも自分の思ったとおりに体を動かさせることができる、と主張する男が動物園に行く話。あとは読んで字の如く。なんでこんなラストなのかよくわからんが、楽しくて良いと思います。
「他人の手」は、自分の手が言うこと聞かなくなったから切り落としてくれと頼む紳士に相対する外科医の物語。ミステリか? ホラーなのか? という系統の作品。
「安楽椅子探偵」は、老犬の一人称ミステリ。題名に偽りありだが、なかなか楽しい。老犬の語り口が全てかな。
「悪魔巡り」は、愛犬と妻に先立たれた男が、不思議なジプシーの老女に出会い、悪魔と契約したことになる話。家に帰ると愛犬と妻がいたわけだが、さて男は今回どうするのか……。これもなかなか面白かった。
「最終飛行」は、タイトルどおり引退前の最後のフライトに飛び立つ飛行機操縦士の物語。彼の胸には色々と去来するが……。「安楽椅子探偵」と並び、一番ほんわかする話ですかね。
「考えるロボット」は、どう見ても死んだ友人と同じ指し筋を持つチェス・ロボットを見かけた男が、ロボットの秘密を探ろうとする物語。今となってはありがちな恐怖譚だが、ストレートな分逆に効果的かも知れない。なあに、オチでびっくりしようなんて思わなければいいのです。