不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

キス・キス/ロアルド・ダール

キス・キス (異色作家短編集)

キス・キス (異色作家短編集)

 解説の阿刀田高はどうかと思う。ダール馬鹿にしてないか? 星新一を確証ないまま巻き込んで、自らの正当性を仄めかしているのにも失笑。もっとも昔から、明快なオチのあるわかりやすい話しか理解できないっぽいので、単純に老化現象とも決め込めないんだろうなあ……。
 そんな解説をよそに、『キス・キス』の内容はもちろんたいへん素晴らしい。粒よりだと思います。ダールはアイデア勝負の作家ではなく、人生へのペーソスをまぶした《粋》こそが身上。少なくとも『キス・キス』では。奇妙な話なんだが、わかる、うんわかるよ! という感覚は他ではなかなか味わえない。
 というわけで、広くお薦めしたい一冊。解説は信用しないように。