不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

バイエルン放送交響楽団

  1. ワーグナー:楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第一幕への前奏曲
  2. プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調Op.19
  3. (アンコール)J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調BWV1003より第3楽章
  4. ベートーヴェン交響曲第7番イ長調Op.92
  5. (アンコール)ブラームスハンガリー舞曲第6番(たぶんシュメリング編)
  6. (アンコール)ビゼー:《アルルの女組曲第2組曲より《ファランドール

 ホールまたは席の問題で、いまいち音が飛んでこない気もしたが、その内気にならなくなった。全般的には、ビタビタ合う上にサウンドの見通しが素晴らしかったが、23日と比べると若干瑕が見受けられた。ツアーの疲れか、それとも、これが水準で23日が特別うまく行ったのか。無根拠だが後者だと思う。というか、ホール反響がデッドだったという事情もありそう。それでもハイレベルで、国内オケと比べたら一瞬でモノが違うのはわかる。
 五嶋みどりは、弱音で勝負を掛けてきた。とにかくひたすら繊細に仕上げた印象。素晴らしかったです。伴奏も五嶋に合わせるように、弱く弱く弾いていた。でもあれで弦が全員音出してるんだよな。パート毎に聞き分け可能だし。凄い。アンコールもご同様。聴衆も集中していて、私の行ったコンサートだと、静寂度合いは一、二を争うと思った。
 ベートーヴェンは大編成で豪快に持って行きました。分厚いサウンドであるにも拘らず、パート単位でクリア。弦が素晴らしいのはデフォルトとして、フルートとオーボエが魅力的。リズムも決まっており、曲が曲なんで熱くなってしまいました。とはいえ解釈自体は概ね堅実。繊細というわけではなく、力押しですかね。
 アンコールの二曲は、本プロ以上にオケと指揮者の本領発揮。《ハンガリー舞曲》はリズム設定が指揮者ごとに本当に千差万別だが、ヤンソンスはアクセントを強く打ち出し、テンポも結構いじったが、オケは全く動ぜずばっちり追随。そして《ファランドール》は、バカスカ鳴らした上に、最終小節で加速&クレッシェンド!これはずるい。当然、大喝采
 というわけで、今日も非常に素晴らしかったわけだが、一曲だけ、《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第一幕への前奏曲には不満を覚えた。私は未だに、ハイティンク指揮ドレスデン・シュターツカペレが忘れられない。爆発、クリア、ブレンド。一見矛盾するこれらの要素が完璧に合一したあの演奏は、恐らく私を一生呪縛するのではないか。今日の演奏は、それと比べると、ちょっと雑。私が物凄い要求をしていることは自覚している。たいへん申し訳ない。