死者の部屋/フランク・ティリエ
- 作者: フランクティリエ,Franck Thilliez,平岡敦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/04/25
- メディア: 文庫
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「サイコキラー」「ひょんなことから大金を手に入れた小物コンビ」「それを捜査するプロファイリング・マニアの女性刑事リューシー*1」という3本のプロットが並行する作品だ。しかも、サイコキラーによる連続殺人とは言いながら、身代金要求が付随したり、小物コンビの信頼関係が奇胎化するサスペンス要素が混じるなど、プロット数以上に様々な類型が込められている。これらは最後に綺麗に収斂し、物語はしっかり締まる。小説の完成度としては、翻訳済みの『タルタロスの審問』(別シリーズ、ランダムハウス講談社)に勝るだろう。しかし、個性的な登場人物たちや、要素の多様性(雑多/猥雑の一歩手前)はそのままであり、読み応えも十分なのだ。
華麗で繊細な筆致も魅力的で、犯人サイドを含めた登場人物たちの心理面を鮮明に、そしてしばしば不気味に描出している。フランスの気鋭の代表作という惹句は、とりあえず額面どおり受け取って差し支えないだろう。続編その他この作家の翻訳がもっと進みますように。
*1:なお彼女には何だか変な過去がありそうだが、本作では語られない。続編で明らかとなるそうなので、翻訳が待たれる。