シンプル・プラン/スコット・スミス
- 作者: スコット・B.スミス,Scott B. Smith,近藤純夫
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1994/02/01
- メディア: 文庫
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大金が次第に人生を狂わせていく様を描く。プロットは一本道であるが、途中で大小様々なことを次々起こして飽きさせない。私と兄、そして両親の過去が感傷を交えつつ語られ、また私と妻の夫婦愛も重要な地位を占めるなど、キャラクター面でもしっかり肉付けされている。このため彼らが基本的には善良だったことがよくわかり、大金の存在ゆえに一種の狂気に駆られていく過程が、より一層読者の目に焼き付くことになる。本人にその自覚がない(事態が段々おかしくなってきたとは思うものの、自分の性格が変容していることには気付いていない)分、変にリアルで恐ろしいのも素晴らしい。なお、余談だが、ジェイコブは大男だが弱気な性格で、三十代後半なのに女性とキスしたことすらなく(よってほぼ確実に童貞)、「このままでは終われん。この金さえあれば何とかなる」みたいなことを言う。読者としては「うわああああああ」と思わざるを得ない。
ストーリーテリングが非常に巧みで、訳文も含めて非常に読みやすい。海外ミステリをあまり読んだことがない人にも強くオススメできる作品である。