さよならを告げた夜/マイクル・コリータ
- 作者: マイクルコリータ,Michael Koryta,越前敏弥
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (9件) を見る
非常にスマートな作品である。諧謔の苦味、人生の悲哀、気の利いた科白、美しい情景描写など、なかなかスタイリッシュで、すいすい読める。これだけで、水準以上の作品であることは確実。しかし、展開もプロットも一本道に過ぎるし、キャラクター造形も通り一編。人間描写については、《私》以外のキャラに対しては、その意欲がそもそも感じられない。その《私》ですら、自意識を突き詰めてゆくという変な勢い(ex:西尾維新)すらなく、はっきり申しあげて、実に薄っぺらい。作者は弱冠21歳だったらしいので仕方ないとも思うが、正直、カッコ付けたいだけではないだろうか。少なからず困惑した。上手いことは確実であるだけに、惜しい。