マヂック・オペラ/山田正紀
マヂック・オペラ --二・二六殺人事件 (ハヤカワ・ミステリワールド)
- 作者: 山田正紀
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/09/22
- メディア: 単行本
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大量死論をベースとして*1、二・二六事件を虚構の高みに引き摺り上げようとした意欲作と言えるだろう。やる気満々モードの山田正紀の常として、地の文におけるあられもない直接的な言及により勿体を付けまくっており、個人的にはやり切れないものを感じる。野心的な構想を前に、作家自身がルンルンしている図しか浮かばないからだ。
もっとも、『マヂック・オペラ』を素晴らしいと捉える人が多いだろうこともよく理解できる。『ミステリ・オペラ』に引き続き、投入される各要素は豪華絢爛、アイデアもなかなかに面白く、背後に据え置かれるテーマ性も十分以上。探偵小説の目を通して昭和史を幻視させる試みは、疎外される私をよそに、一定の成功を収めている。基本的には壮大な法螺話なので、長さ的にもこれが適切(壮大な法螺話を、手短にまとめられても困る)。つまり、私があまり楽しめなかったのは、専ら私自身の責任であって、山田正紀に帰責事由はないと申し添えておきたい。