不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

編集者を殺せ/レックス・スタウト

編集者を殺せ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

編集者を殺せ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 作りが随分と粗い。構成がユルユル。ミッシングリンクものと主張することさえ躊躇われる。ミステリ・物語の両面から、流れが全くスムーズではないのが致命的。ウルフとアーチーは、《思わせぶりなことして犯人の焦りから来る行動を引き出す》という探偵手法を採ることも多いわけだが、今回はそれにかまける期間が長過ぎ(ほとんど最初から最後まで!)、正直不快であった。いくらなんでも、行き当たりばったりに過ぎる。あと、これはどう見てもビブリオ・ミステリじゃないです。
 とはいえ、ラストの、正義の使徒という感じのネロ・ウルフ及び作者の筆には(いつものことだが)感ずるところ大であった。《殺人犯に裁きを受けさせることは、紛れもなく正義なのである》との自信に満ち溢れている。だからこそ、ウルフは関係者を全員集めてさてと言えるのであろう。常にこういう小説ばかりだと飽きようが、たまにだと粋と感じてしまう。いい作家ですなあ。