神戸市室内合奏団
- モーツァルト:交響曲第29番イ長調K.201(186a)
- モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491
- モーツァルト:交響曲第39番変ホ長調K.543
- (アンコール)モーツァルト:交響曲第41番ハ長調K.551《ジュピター》よりフィナーレ
- 伊藤恵(ピアノ)
- ゲルハルト・ボッセ(指揮)
モダン楽器の小編成オケによるモーツァルト。
指揮者のボッセ(82)は昨年転んで足を骨折したと聞き及んでおり、老け込んでいないか、そもそもちゃんと振れるのか心配していたが、それなりに元気そうで一安心。演奏は、1st.ヴァイオリンを中心とした弦楽器に細かく表情を付け、楽想を描き分けてゆくというもの。特に弓使いは、リハーサルで相当細かく指示をしたと思しく、本番の棒が明確でなくとも、ボッセの意思は確実にオケに伝わっていた。そしてもちろん、ミクロの部分にだけかまけているわけではなく、全体のパースペクティブにも一本筋が通っており、安心して聴けるモーツァルトとなった。オケの出来は、弦の柔らかくて温かい音が印象的で、管はあまり印象に残らない。合奏能力はそれほど高いわけではなく、基本的に音が団子。変な音も散見された。
というわけで、特に管がそれほど活躍しない(ティンパニもない)交響曲第29番が出来としては最高だったかも。第39番も楽しめた。さっきも言ったが、両曲ともに弦の芸の細かさが光った。問題はアンコールの《ジュピター》で、1st.ヴァイオリン主導タイプの演奏、しかもパートの分離が良くない団体だと、このフーガはちょっと厳しいかも。推進力はあったんで助かってましたが。
で、伊藤恵のピアノはとても良かった。シューマンで名を挙げた人らしい、とてもロマンティックな解釈ではあったが、曲が曲だけに大袈裟に聞こえず、手応え十分。タッチもとても綺麗。涙ぐむオケ奏者もいましたね。