ネロ・ウルフ対FBI/R・スタウト
- 作者: レックス・スタウト,高見浩
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/02/10
- メディア: 文庫
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私ももう老人であり、ここしばらくの業務負荷が心身に応えてならない。いっそのこと軽い狭心症でも起こすことができれば怠けられて嬉しいのだが。しかしやっちゃう時は、くも膜下とか心筋梗塞とか肝硬変とか、一気に命に関わる話になるんだろうねえ。
……以上、時事ネタに関わる発言だが、『ネロ・ウルフ対FBI』にも経年の影は見え隠れする。
アーチーがちょっとおっさんなのである。もちろんこれは、一人称が代わり、読みなれた《僕》でなく《私》になったせいもあるだろう。専ら日本人の語学センス上の問題として、《僕》は《私》よりも精神的に幼い印象を受ける。しかし断じてそれだけではない。この作品において、アーチーは特に女性を相手にするとき、ほんの少しだが年齢ネタを持ち出す。自分と相手の年齢差を気にする素振りを見せるのだ。実態としても自覚が出るほど歳を取った、ということだろう。
ネロ・ウルフは相変わらずなので安心できるけれども。
作品の出来は、いつものレックス・スタウトとしか言いようがない。実際のFBIはこんなもんじゃないだろうが、この本を読むという行為の快適さは、リアリティーのなさを補って余りある。FBIと対決していながら、国家的なレベルのきな臭さをまったく感じさせないのは、反体制派とはいえ、スタウトもやはり老人であったのだろう。
というわけで、今日もまたぐだぐだのまま眠ることにする。復調できません。