不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

NHK交響楽団第1761回定期公演

15時〜 NHKホール

  1. ブラームス交響曲第2番ニ長調作品73
  2. ブラームス交響曲第3番ヘ長調作品90

 ツィクルス第二弾の二日目を聴いて参りました。
 演奏は予想通りで、すっきり爽やか系だけれどカッと熱くなる時も結構ある感じです。フレージングもリズム感も調和がとれていて、そして最初から最後まで音楽の見通しが素晴らしく良くて、サウンドも解像度が異様なまでに郄く、とにかく感心いたしました。無駄なものは何一つないが、切り詰めすぎてもおらず、「音楽を《情念の音による露出》としてだけではなく《鳴り響く構造体》としても捉えている」というタイプの聴き手にとっては一つの理想形ですらあったと思います。要は、まさに「結構なお手前でございました」としか言いようがない演奏。2番で意外に遅めのテンポを採用していたこと(しかしフィナーレの最後ではギアをトップに入れてテンション面でもスピード面でも張り詰めていました)と、3番の第2〜4楽章を切れ目なしで演奏させていたことが印象に残った次第であります。
 ブロムシュテットのような演奏に拒否反応を示す自称ブラームス・ファンがいてもまあしょうがないかとは思いますが、情緒纏綿としてこそ《ブラ―ムスはお好き?》だ、という素人の陥りやすい罠を意図的に回避し、構成・構造で聴かせようとする演奏としては、本日のブロムシュテットN響が一つの頂点を踏みかけていたのは間違いないです。ただし、木管にもう一段の自発的ニュアンス付けがあっても良いような気はいたしました。