不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

NHK交響楽団第1733回定期公演

15時〜 NHKホール

  1. マーラー交響曲第9番ニ長調

 きっと力の抜け切った、枯れたマラ9が聴けるんだろうなあ……と思って行ったら、良い方向で裏切られた。
 さらさらスムーズに流れる演奏で、どんな箇所でもほとんど粘らないのは予想通りだったのだが、全体がきりりと引き締まっており、盛り上がる所では確かに「熱量」を感じた。テキパキした奏楽は若々しさすら感じさせた。これは意外。というかここ数年でプレヴィンは一番体調が良かったっぽく、入退場時は杖だけでは足りず介添が付いていたものの、表情も結構あって、終演後も特にお疲れモードであるようには見えなかった。座っての指揮だが手も肩の上までよくあがっており、心なしか指示も過去に比べて明確であったように思う。
 オーケストラの集中力も高く、内容がいっぱいに詰まった、緊密な演奏が展開されていた。正直私は、この曲のことを「CDで聴くと名曲だが、実演で聴くと意外と響きのテクスチュアが薄い。さすが《作曲者本人が実演で一度も聴かなかった》だけのことはある、過去の例から言ってもマーラーは初演後スコアに手を入れるわけで、この曲って、ぶっちゃけ未完成じゃね?」ぐらいに思っていたのだが、その印象が初めて完全に払しょくさせられた。ラトル指揮ベルリン・フィルでもこの曲を実演で聴いていたことからすると、本日のNHK交響楽団の完成度がいかに高かった(と私は聴いたか)わかろうというものである。確かに「おおっと」という瞬間もあるにはありましたが、全般的に本当に素晴らしい演奏でありました。やはり日本一のオーケストラはNHK交響楽団なのか。もちろん、プレヴィンの緊密な音楽作りがあってのことではあるけれど。
 曲と指揮者の印象を改めるに至った、良い演奏会でありました。……またこの指揮者聴きたいけれど、B定期には行けない以上、本日が実演で接する最後の機会であったかもしれません。