不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2012 東京交響楽団

19時〜 テアトロ・ジーリオ・ショウワ

  1. ドヴォルザーク:スラブ舞曲第1番
  2. ドヴォルザーク:スラブ舞曲第8番
  3. ドヴォルザーク交響曲第7番
  4. 【アンコール】ドヴォルザーク:スラブ舞曲第8番
  • 東京交響楽団(東京)
  • クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮)

 ウルバンスキが2013年4月から3年間、東響の首席客演指揮者を務めると、2012年6月に発表された。2012年8月時点における現任の首席客演指揮者ニコラ・ルイゾッティは、3年程度の任期中、結局は一回か二回演奏会を開いただけに終わった。しかも2011年夏の客演予定(昨年のサマミューザにも登場予定だった)は直前にキャンセルされるという始末である。ルイゾッティは海外でオペラ指揮者として順調に出世中で忙しいし、時期的に見れば福島第一原発にちびるしかなかったのではないかとも思う。別に非難しようとは思いませんが、この所業を、我々は一生忘れてはならない。今後、彼の振る演奏会やオペラ公演には行かないことで抗議の意を表したい。
 まあルイゾッティのことはどうでもいい。ウルバンスキは1980年生まれとまだ若く、放射能の影響を過剰に恐れてもおかしくない年齢であるが、彼は2011年初夏という早い段階で東響定期に予定通り登場、素晴らしいショスタコーヴィチを聴かせた。いやあどこぞの1961年11月生まれの中高年イタリア人首席客演指揮者とは違いますな。まあルイゾッティのことは今度こそ脇に置き、ウルバンスキは実は首席客演指揮者就任前にも2回東響を振る予定が組まれている。それが今年のサマーミューザである。これは行くしかない。
 非常に硬派な演奏だった。ドヴォルザークの民俗性やら歌謡性やらには一顧だにせず、とにかく楽譜をまっすぐ音化したもので、全てが画然と鳴っていた。オーケストラをそのように鳴らしたウルバンスキの手腕はやはり非凡なものがあるけれど、ホールのデッドな音響も相俟って、もうちょっとソフトな、あるいは馥郁とした味わいが滲んでも面白かったかなという印象である。twitter上では「微妙」だったとする人も散見されるが、それもむべなるかな。あと、この人はあまりサウンドブレンドしないので、それを音が濁っていると捉えた人もいる模様。これは多分、もっと上手いオーケストラをウルバンスキが振ったら、劇的に印象が変わるはずです。あるいはサントリーホールでの共演を聴くとか(今年度はないけど)。個人的には、スラヴ舞曲すら真面目に鳴らしていたのが印象的であります。