不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

東京交響楽団第602回定期演奏会

18時〜 サントリーホール

  1. マーラー:歌曲集「さすらう若人の歌
  2. リスト:ファウスト交響曲 S.108

 この日はダブルヘッダー。ホルツマイアの《さすらう若人の歌》は、歌い口が上手くて久々に堪能できました。やはりリートは上手い歌手で聴かないと話にならんのだなあ。伴奏もなかなかのもの。
 しかしこの演奏会のハイライトは、後半のファウスト交響曲に他ならない。普通は70分を超えることの多いこの大曲を、スダーンは楽章の間(しかも第一楽章後にはチューニングもし直しててました)も含め65分程度で駆け抜けた。スダーンは別にこれみよがしに見栄を切るような演奏はさせず、あくまで直球勝負に出る指揮者ですが、それがこの速めのテンポを採用することで、かなり劇的に音楽が絞られていたように思われます。
 そしてオーケストラの出来上がり具合が半端ない! 同日マチネーで聴いた読売日本交響楽団では勝負にならないぐらい、アンサンブルが精緻で驚倒しました。重心低めの味のある音すら出していて、いやはやこれブラインドで聴かされたら、ドイツ放送局の上位オケだと言われたら信じるレベルに到達していたように思われます。テンションも高く、各ソロも素晴らしい出来栄え。さらに、第三楽章の最後に登場する男声合唱テノール・ソロも素晴らしい。これは日本におけるファウスト交響曲演奏史のページを塗り替えたんじゃないか。この曲ってここまで輝かしく、艶めかしく、感動的に、圧倒的に、響き得るものだったのか……。