サー・チェン ピアノ・リサイタル 夏のメロドラマ
19時〜 東京文化会館小ホール
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 op.13「悲愴」
- ブラームス:4つの小品 op.119
- シューベルト:即興曲 変ト長調 op.90-3
- ラヴェル:水の戯れ
- リスト:即興ワルツ「小さなお気に入りワルツの改作」
- リスト:ため息
- ショパン:幻想即興曲
- ショパン:練習曲第3番 ホ長調 op.10-3「別れの曲」
- ショパン:練習曲第12番 ハ短調 op.10-12「革命」
- 【アンコール】すまんチェック忘れた。中国の曲っぽかったが……。
- 【アンコール】ドビュッシー:ベルガマスク組曲よりパスピエ
- サー・チェン(ピアノ)
本来はラヴェルの次がリストの即興ワルツ《小さなお気に入りワルツの改作》だったが、それがショパンの即興曲に差し替えられた上で曲順も変更。ちなみに前半はベートーヴェンとブラームスで、以降が後半です。拍手はリスト《ため息》の後でもらってました。
この中国人ピアニスト(まだ二十代?)は初めて聴きましたが、意外と骨太などっしりとした解釈の演奏でした。そしてその中で、とにかく全ての音とモチーフをクリアにはっきりと聴かせようとする。指が解釈に付いて行かなかった箇所も若干あったように思いましたが、これは彼女の技量が低いわけでは全くなく、単に解釈が仮借なさ過ぎということでした。幻想即興曲の冒頭とか、もう本当にマルカートで驚いた。ベートーヴェンも、第一楽章の主部やフィナーレはモーツァルトやハイドンであるかのようにコロコロと玉を転がすように鳴ってましたなあ。一方、その速い箇所と、第一楽章のグラーベや第二楽章冒頭の深沈たる響きとは断裂があるように思われ、それはそれで結構興味深かったです。そうだよなあベートーヴェンって古典美とロマン派的自意識の間で引き裂かれている人でもあるよなあ……。他の曲目でもじっくり聴かせてくれましたが、リズミカルな部分のノリが(気のせいかも知れないことは重々認めますが)中国っぽくてなかなか面白い。そして、ベートーヴェンもブラームスもシューベルトもラヴェルもリストもショパンも、絶対に雰囲気では流さない。
彼女は結構な実力者とお見受けしました。やや一本気になる場面もありますが、今後さらにこなれて来ると、益々面白くなるでしょう。また来てね。
……それにしても、《別れの曲》が終わった後に一人でばちばち拍手し始めた人は一体何を考えていたのか。次の曲のために、ピアニストは見るからに神経を集中させてたじゃねえか。訝しいのは、シューベルト→ラヴェル→リストの曲間、および幻想即興曲→別れの曲の曲間では、拍手が全く出なかったのに、なぜか《別れの曲》の後で出たということ。なぜここでだけ。本当によくわからん。