不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

アナスタシア・エヴシナ ピアノリサイタル

19時〜 ムジカーザ

  1. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調op.81
  2. ショパン:幻想曲へ短調op.49
  3. ドビュッシー:版画
  4. スクリャービン:ピアノ・ソナタ第3番嬰ヘ短調op.23
  5. メトネル:忘れられた調べop.38第1集より7曲
    • 優美な踊り(Danza Graziosa),祝祭の踊り(Danza Festiva),
    • 川の歌(Canzona Fluviala),田舎の踊り(Danza Rustica),
    • 夕べの歌(Canzona Serenata),森の踊り(Danza Silvestra),
    • 回想的に(Alla Reminiscenza)
  6. 【アンコール】ショパン:練習曲ハ短調op.25-12
  • アナスタシア・エヴシナ(ピアノ)

 アナスタシア・エヴシナは1987年生まれのロシア人ピアニストで、ロシア国内の地方コンクールで優勝するなどし、現在はモスクワチャイコフスキー音楽院の大学院コースで勉強中らしい。今回が初来日となる模様だが、ネットで検索する限り他日公演はなし。どうも録音もないようで、Youtubeに動画が上がってるだけかも。私も全く知らなかったピアニストで、どういう演奏家なのかすら全く予想が付かなかったわけだが、「ムジカーザって会場、いい感じっぽいけど行ったことないしな……」とホールを査察するようなノリで向かったわけである。代々木上原とか用事ない限り行きませんしねー。
 演奏は意外と硬派。エヴシナは美人さんでしたが、常に目を閉じ(薄眼は開けているのかも知れんが近い席からも確認できず)、眉間に皺を寄せて奏楽。ピアノの鳴らし方も結構豪快で、強音も力一杯に弾く。力み過ぎて指が回り切ってない箇所も散見されて、それがベートーヴェンでは殊の外目立っていました。またスクリャービンの第二楽章に顕著でしたが、もうちょっとリズムに乗ってくれよという箇所も。ということでこれらは減点材料なんですが、楽曲の構成はしっかりしたもので、細部のニュアンス付けは薄いけれど音そのものは克明に鳴らすため、終わってみれば結構満足。演奏が進むに連れて本人もこなれてきたのか、尻上がりに調子を上げていたのも印象的です。メトネルドビュッシースクリャービンショパンベートーヴェンという印象です。アンコールのショパンも良かったな。
 というわけで演奏については以上。査察気分で行ったムジカーザに関しては、うん非常に小振りだけどなかなかいい会場ですな。ここでピアニート公国の建国が宣言されたのかと思うと色々と感慨深いです。なお当日の客層は少々不思議な感じで、ロシア人っぽい方がそれなりにいらっしゃって、なぜか演奏中にも堂々とシャッターの音をさせて写真をとる大男も(さすがに休憩中に注意されてましたが)。終演後の花束贈呈では、外人ばかりか日本人相手でもロシア的キスで対応。あれひょっとして皆さん知り合いっすか。