不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

東京都交響楽団第733回定期演奏会

2012年4月20日 19時〜 東京文化会館

  1. ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調
  2. ショスタコーヴィチ交響曲第10番 ホ短調

 素晴らしいショスタコーヴィチ! 右顧左眄せず、正面からがっちり固めた剛毅にして骨太な解釈/設計の上で、充実した演奏が展開されました。腹にズシリと来る重いサウンドは、まさにこのコンビの象徴ですな。音色も暗くてショスタコーヴィチにはぴったりでありました。とりわけ素晴らしいのは弦楽器で、激しく曲想を煽ったかと思えば、深沈たる表情も見せ、当夜の成功を下支えしておりました。管と打も含めて、最初から最後まで安定していたのも特筆すべきで、こういう演奏が日本のオーケストラにも可能になった辺り、いつまでも外来オケ偏重もいかんよなと痛感させられました。けだし名演と言えましょう。
 一方、前半は辻井伸行が相変わらずの一本調子で、予想通りとはいえ、プロのオーケストラの定期演奏会には出て来て欲しくないなあと思うことしきり。テンポが遅い第二楽章では、クリアなタッチで清廉な空気感を醸し出して感心した*1んですが、第一楽章と第三楽章は、猪突猛進してニュアンスも何もかもが吹き飛んでいた。経過句もしくは装飾的な箇所を、信じられないほど無意味/無内容にしか弾けていないのにもウンザリ。彼の将来に悲観的にならざるを得ない。というかもう24歳だし、「若手だしまだまだこれから」とか言ってられる状況じゃないですよ、だってもうこんな音楽をベースにして進歩するしかないんだぜ?
 というわけで、辻井伸行には現時点で私は否定的ですが、それでも、カーテンコール時に、インバルが慣れていないのに*2辻井伸行を腕を組んでエスコート、結果として1stヴァイオリンの後列の奏者か譜面立てか椅子かに辻井がぶつかっていたのは、危ないので止めた方が良かったんじゃないかと思いました。ぶつかったのが手だったら大事だからなあ。

*1:よって今日は演奏が終わったらちゃんと拍手しました。

*2:実際、本日は演奏前と演奏直後は別の人が辻井と腕を組んでエスコート、インバルはその後ろを歩くという感じでした。