不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

読売日本交響楽団第514回定期演奏会

2012年4月16日19時〜 サントリーホール

  1. ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
  2. ドビュッシー(キャプレ編):バレエ音楽《おもちゃ箱》
  3. ストラヴィンスキーバレエ音楽ペトルーシュカ》(1945年版)

 ドビュッシーの《牧神の午後への前奏曲》は印象派音楽の代表作とされているが、それがかなり濃厚/湿潤たるオーケストレーションが施されていたのだと実感。というのも、《おもちゃ箱》→《ペトルーシュカ》と曲目が進むにつれ、オーケストレーションが「乾いて」いったからである。また曲想上の音の動きも――バレエ音楽が二つも入っているのだから当たり前かも知れないが――ダイナミズムが後になるにつれ強まるという按配。プログラミングの妙が光ります。
 演奏も素晴らしい。《牧神》すらハードな感触で進み、オーケストラの各パートから出る音をブレンドさせず、あえてそのままぶつけ合う男性的なスタイル。だが一体感は全く損なわれていない。リズムで強固に統一させたからだろうなあ。このスタイル、前半も素晴らしかったが後半の《ペトルーシュカ》に至るや炸裂し、サイケデリックで同時にとても華麗な音響絵巻が現出した。読響のメンバーによるソロもまずは及第点。ヤルヴィ指揮パリ管やデュトワ指揮N響の方が、メカニカル/リズム/愉悦感いずれも上ではあったように思うが、この日のカンブルラン指揮読響も、上々の出来栄えであったように思う。
 カンブルランは音楽の骨組みを直視し、それを目一杯楽しむという、ある意味「一周」回ってる芸風の指揮者とお見受けするが、さてその彼が、オルガンをイメージしたと伝わるフランクの交響曲をどう料理するのか、今から楽しみである。