不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

読売日本交響楽団第509回定期演奏会

19時〜 サントリーホール

  1. ベルリオーズ:序曲《リア王》op.4
  2. チャイコフスキー:幻想序曲《ロミオとジュリエット
  3. チャイコフスキー交響曲第6番ロ短調op.74《悲愴》

 強烈だったのは《悲愴》の第2楽章である。流れるように演奏する人が多い中、カンブルランは変拍子を強調し、まさに踊るように音楽を弾ませていた。テンポも快速だったため、かなりメリハリの利いた音楽に化けており、この楽章からこれまで聴いたことのない表情を引き出していたように思う。続く第3楽章も見事な出来栄えで、楽想という横の流れとリズムと言う縦ノリの二兎を得て二兎とも得たという、これまた素晴らしい演奏を披露。両端楽章も素晴らしく、特にフィナーレのそれは、スマートに白熱し、その熱を保ったまま音量だけが減衰していく、なかなか見られない音楽作りになっていたと思います。オーケストラの鳴りは、もう一段の制度を求めたくなりましたが、十二分にグッジョブの範疇でありました。カンブルランはこれまで聴いたところ、サウンドそのものにはあまり肉付けしないタイプなので、これでいいのかも知れない。
 前半も見事な演奏。序曲《リア王》が素晴らしいのは当たり前として、《ロミオとジュリエット》がまるでベルリオーズの曲のように響いていたのは面白い。ロマン性たっぷり情緒纏綿たるメロディー・メーカーとしてのチャイコフスキーを強調せず、かなり男性的で構築的な音楽を作る人としてのチャイコフスキーを強調しており、結構直線的な表現になっていたと思います。これはこれで素晴らしいんだよなあ。お涙頂戴の悲劇ではなく、緊迫感溢れる悲劇/惨劇って感じを受けた。これは《悲愴》でも同様でした。
 なお今日は客層も良かったです。《悲愴》では、パウゼだと本当に物音ひとつしませんでした。音が鳴ってる時は咳してる人が散見されましたが、季節柄この程度はしょうがないです。